神戸 徒然の記, 【しろぽんの十大小説 5位】 バルザック 「ゴリオ爺さん」 人間喜劇の白眉
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2009/08/27/(木) 5位 しろぴ
【しろぽんの十大小説 5位】 バルザック 「ゴリオ爺さん」 人間喜劇の白眉
チョー多作の作家バルザックの作品からこれ!というのを選ぶのは難しい。
それぞれが並の作品だからではなく、それぞれが素晴らしく力に漲っているからだ。この作家は疲れを知らないのか



伝記などを読むと、この作家も幾多の人生の波を経験していて、その都度、お金に困って小説を書くことになったり、決して恵まれた環境で執筆している訳ではない。
それでも、借金を返すために書いたとしても、これらの作品は素晴らしい。


バルザックの小説は、それぞれの作品に同じ登場人物が出てきたりして、一連のつながった背景世界を持っている。
それがために、作品全体を「人間喜劇」と名づけたシリーズのように総称するときもある。

ここで取り上げた「ゴリオ爺さん」にも、他の作品に登場する重要な人物が何人か登場しています。
ラスティニアックやヴォートランはお気に入りの人物で、この人物が登場するからと、他の作品を探したこともありました


「ゴリオ爺さん」のストーリーは、リア王のような、盲目の親の愛に対する子供の無慈悲な裏切りをテーマに進む。
主人公のゴリオ爺さんには2人の娘がいて、お爺さんが一生かけて働き貯めたお金(莫大な金額)を持参金にして、裕福な資本家や伯爵家の貴族と結婚させます
しかし、娘は、二人ともそんな親の苦労や愛情は鼻にもかけず、贅沢放題で愛人との生活のために、いつまでもゴリオ爺さんに無心し、ついに吸い尽くし、ゴリオ爺さんの莫大な財産をすっかり使い果たしてしまいます。もちろん、老後の蓄えも残っていません。
このゴリオ爺さんには、リア王のコーディリアに当たる人もおらず、実に気の毒な境遇のまま死んでいく


このゴリオ爺さん親子以外に、ゴリオ爺さんの住むアパートの住民たちの話も同時進行し、出世を夢見る青年ラスティニアックがなんとか社交界での地位を得ようと貴族の夫人を愛人にしようと頑張ったり、その愛人がゴリオ爺さんの娘だったり、大悪党で気骨とカリスマをもつヴォートランがラスティニアックを金持ちにしようと(もち、自分も儲ける)画策して、最後に捕まったり。いろいろな話が並行に進むので、リア王ほど陰鬱な感じはなかった。


でも、最後まで読み返して、考えてみると、これは悲惨な話で、誰にもほとんど救いがない。ただ、若いラスティニアックがゴリオ爺さんを埋葬後、パリを眼下に見下ろし、「これから、おれとおまえの勝負だ」とつぶやく台詞で、かすかに未来へ希望が持てる。この一言がこの作品を他の作品より1歩高めている台詞かもしれない。


私は、バルザックに凝っているときには、彼の伝記や同時代のほかの作家の作品など読んだり、近世ヨーロッパの歴史書を読んだりしていたので、この時代の独特の結婚観、出世の仕組みなどがスムーズに理解できたが、現在の常識から言うと、公然と社交界で愛人と付き合ったり、社交界で有力な夫人の愛人になることで出世する方法などに戸惑いを感じるかもしれない。この時代のほかの小説や歴史・文化を知ってから読むと、もっと深く理解できると思う。


読み返してみて、バルザックがどの作品においても、世の中の理不尽に人間の良心が踏みつけにされるさまをテーマにしていることは良く分かる。全くの悲劇でありながら、「喜劇」として描くところがこの作家の天才なのかも知れない

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